当サイトでは後継者不在に困っている中小企業の経営者に役立つ情報をまとめています。
このページでは、従業員を後継者として育成する社内承継のメリット・デメリットや成功させるために必要なことを紹介しています。
2割近い経営者が
従業員承継を選択
日本政策金融公庫の2020年発表資料によると、事業承継で実子を後継者に選ぶことは減少傾向にある一方、従業員への承継が増加。
事業承継の際に、「子どもに継がせよう」と単純に思うのではなく、経営者としての実力や事業や会社への理解度を重視しつつあることがわかります。
従業員承継の
メリット・デメリット
メリット
- 親族よりも後継者候補の選択肢が増える
- 会社の事業や業界に詳しい人材を選べる
- 取引先・金融機関からの信頼を得やすい
親族を後継者として考える場合は対象者が限られますが、従業員承継では社内の役員や従業員の中から適任者を選べるので選択の幅が広くなります。
また従業員承継は長年同じ会社の中で一緒に事業を成長させてきた仲間の一人ですので、事業の方向性や業界のことを熟知しています。
その部分は時間をかけて教育をしたり引き継ぎをしなくても済むのでスピーディーに進められます。
M&Aなど全くの第三者を経営者として迎え入れると、会社は存続できるかもしれませんが社風や企業文化が変わってしまうこともあります。
その点、従業員承継では創業当時からの企業理念や考え方をそのまま引き継げます。
また従業員承継は取引先や金融機関からも認めてもらいやすく信頼関係も維持できます。
外部から見て不自然な人事を行うと不信感をもたれることがありますが、従業員承継の場合は後継者のことをわかっているので違和感がありません。
デメリット
- 実力があっても引き継ぐとは限らない
- 株式取得など資金面での問題がある
- 個人債務保証の引き継ぎが難しい
社内の役員・従業員の中で実力が十分で経営者として適任であることを会社が認めていても、必ず引き受けるとは限りません。
能力の高い人は他社からヘッドハンティングされるケースもあるため会社に残らないかもしれません。
従業員承継にこだわって人選を誤ってしまうと、その後の会社経営に直接影響してきます。
後継者候補として経営者が気に入っていても、他の従業員からの人望がないと会社を引っ張っていくことが難しくなるので注意が必要です。
また事業継承の際は従業員に株式を買い取ってもらうのが基本ですが、そのような資金を急に用意するのは困難です。
役員にして役員報酬を買い取り資金に充てるなど、資金の調達サポートも行わなければなりません。
さらに現経営者の個人債務保証の引き継ぎが難しいという問題もあります。
個人資産の担保設定がされていたり、後継者に信用力が不足している場合は、金融機関から了承されないケースもあります。
従業員承継の
最大のハードルは資金面
親族内承継において株式や事業用資産などの引き継ぎは相続などの手続きを行うことで可能ですが、従業員承継はそうは行きません。
有償譲渡というかたちになるため相続税対策は不要ですが、資金調達のハードルが高くなります。
後継者となる従業員に資金力がないケースが多く、個人保証債務の引き継ぎも本人の家族が了承しないとそこでストップしてしまうからです。
また親族外に自社株式を譲るとなると経営者は親族の合意なしでは進めることができません。
従業員承継では会社の事業や企業文化などを引き継ぐ点ではスムーズに運びますが、資金面においては、さまざまな調整や手続きが必要だったり、専門家と相談しなければならないなど解決すべき課題は多いと言えるでしょう。
資金調達はどうする?
対応とその流れ
資金なしでは事業承継ができない
事業承継を考える際にはさまざまな資金が必要になります。
承継前から会社に体力をつけ事業基盤を堅固にするための投資が必要ですし、自社株式や事業用資産の買取りのための資金、相続税・贈与税などの支払いなどもあります。
これまで資金繰りに関して何の問題もなく経営を続けていても、経営者が交代することで金融機関の審査が厳しくなって、運転資金を調達するための借入れができなくなったり、取引先への支払条件が厳しくなることも考えられます。
子や親族との合意形成は必須
従業員承継で株式・事業用資産を承継するために経営者から遺贈や贈与を進めるには相続税・贈与税が課税されます。
その場合、経営者は相続人の遺留分も考慮しながら、その旨を遺言書で明らかにしておく必要があります。
したがって従業員承継とはいえ、経営者の子や親族との合意形成は必須となり、納得してもらえないと争いになる可能性もあります。
資金をどのように調達するかという問題だけでなく関係各所との調整も重要になります。
どのような資金調達の方法がある?
従業員による株式取得(EBO)や役員による株式取得(MBO)では、どうやって資金調達をするかが事業承継成功のカギとなります。
よく行われるのは金融機関からの借り入れや後継者候補の役員報酬の引き上げですが、これ以外にも方法があります。
例えば、中小企業庁が主導する経営承継円滑化法に基づく金融支援は親族外承継でも利用が可能です。
またある程度の規模がある中小企業おいては、会社の将来性を見込んだファンドを組んだりベンチャーキャピタルから投資を受ける方法もあります。
MBPとは、役員による株式取得(Management Buy-Out)EBOとは、従業員による株式取得(Employee BuyOut)を指します。
経営承継円滑化法に基づく金融支援とは
都道府県知事の認定を条件に、事業承継時に必要な資金の融資が受けられる支援制度で、支援機関は日本政策金融公庫、信用保証協会です。
個人でも特例的な措置として対象となり、信用保証協会では通常とは別の保証枠となります。
事業承継を行う際に、多額な資金が必要となったり、経営者の交代で信用がなくなり金融機関や取引先の条件が厳しくなった場合、事業継続に支障が出ていると都道府県知事が認定すると活用できるので有効な解決方法になります。
従業員承継を成功させるには
事業承継前後5年間の取組み内容
中小企業庁の資料によると事業承継前5年程度の間に承継に向けて実施した取組みの割合は、すべての項目で親族内承継が高くなっていることがわかります。
これは親族内承継は実際に就任するまでの期間が長く、準備に時間をかけられるからです。
では事業承継後5年の取組みはどうかというと、親族内承継と従業員承継の差はそれほど大きくはなく、事業承継時の経営方針の明確化が新たな取組へのチャレンジにつながることが読み取れます。
社員への事業承継
経営者として優秀な部下が居れば自社の事も知っているので、最良の選択肢と言えると思います。
ただし、基本的に中小企業に、優秀な経営者候補の部下が入社しているケースは少ないでしょう。
例えば営業部長としては優秀ですが、トップになると私利私欲が出てしまい現場からの反発を受けてしまったり、経営判断の様にさまざまなプラス(リターン)とマイナス(リスクなど)の側面がある、“究極の判断”をできる器量を持つ人材が社内にいる事は稀です。
社員への事業承継は遅い
従業員承継の弱い部分は、親族承継に比べて教育や承継までの準備期間が短いことです。逆に言うと、計画性を持って準備していれば、心強いでしょう。
しかし、あなたが経営者として優秀だったとしても、右腕や後継者を育てることが優秀だとは限りません。なぜなら、経営者に必要なゼロから1を生み出す資質と、人材育成の資質は、必ずしも共存しているわけではないからです。
自身が引退のときが近づき、急に焦っているとしたら、もはやそれは遅いのかもしれません。当メディアでも、元経営者・山田氏の事業承継の経緯をお伺いしましたが、「気づいたら世間で言われる定年の歳になってしまっていた」とおっしゃっていました。
そんな山田氏が事業承継のために活用したのが、「日本プロ経営者協会」でした。
後継者の経験・資質・学歴などの条件をオーナーが挙げ、オーナーの条件に合う、かつその会社を経営したいプロフェッショナルが手を挙げる。
所属するプロ経営者の数は、2023年3月時点で1,500名。
まさに、中小企業経営者のためのプラットフォームです。
後継者が銀行保証に入る事は無く、ストックオプションなどの魅力的なインセンティブ設計を行うことで、後継者にもメリットがあるため、中小企業では招聘困難なスキルを持った後継者の招聘が可能になります。
当メディアでは、この日本プロ経営者協会を始め、中小企業経営者が後継者を探すための情報を掲載していますので、ぜひ活用してください。
山田氏の事業承継の経緯については、こちらのページで紹介をしています。
「後継者がいない」という理由で、黒字廃業を選ぶ中小企業経営者が、全廃業のうち、3割を超えています。
独自の技術や知見が、後継者不足によって失われることは、日本経済の衰退を加速させることに他なりません。
その解決に、コンテンツという形で貢献するために生まれたメディアです。