本当の意味で事業や会社を任せられる後継者を探そうとすれば、単に後継者として相応しい候補者を見つけるだけでなく、自社にとって適切な能力や資質を備えた人材へ育成しなければなりません。このページでは後継者の育成についてまとめました。
後継者育成とは
後継者育成とは、文字通り自社の後継者として相応しい人材に育成するための取り組みや過程であり、単に能力や人望に優れた人物から、本当の意味で自社の後継者として適性を備えた人材へと成長させることが目的です。
後継者候補として魅力的な人物を見つけられたとしても、適切な後継者育成が完了しないまま事業を引き継いでしまうと、様々な不具合が生じて経営リスクが増大します。
後継者育成の目的・重要性
単なる一部署の従業員や役員の1人として活躍するだけであれば、様々な人物が候補としてピックアップできるかも知れません。しかし会社や事業を統率して従業員を牽引していくためにはただ仕事の成績が良ければ十分というものでなく、人を率いるリーダーシップやプロジェクトを統括できるマネジメントスキル、自社の現在の状況を把握して将来像を明確にイメージ化できるビジネスセンス、さらには多角的なコミュニケーション能力など総合力が求められます。
そのため、後継者育成はあくまでも「経営者」として相応しい人物を育てるための取り組みであり、自社の性質や業種に相応しい適正性を獲得させることが重要です。
後継者育成が不十分だった場合に生じるリスク
従業員としては有能で大活躍していたにもかかわらず、経営者としての立場になった途端、経営が上手くいかずに企業力が弱体化して売上も低下してしまうといったケースは珍しくありません。
そもそも従業員や労働者としての立場と、経営者としての立場はまるで異なるものであり、後継者には経営者の視点で企業の状況や戦略を見極める能力が必要になります。
後継者育成が不十分だった場合、経営戦略を正しく構築できず、また従業員や取引先からの信頼も失われ、会社としての事業基盤が脆弱化してしまうことになるでしょう。
後継者育成にかかる期間は5年~10年
後継者の育成は一朝一夕で叶えられるものでなく、一般的には後継者育成の期間として5~10年という長さが求められることも少なくありません。
また、後継者育成には単に個人的な能力を養って伸ばすという目的だけでなく、後継者として周囲からの信頼を集めて、次代の経営者として認められるという目的もあります。
そのため十分な期間を活用して人材ネットワークを構築し、能力的にも人格的にも実績においても周囲の人々から認められることが大切です。
後継者育成を成功させるポイント
十分な育成期間を確保する
上述したように後継者育成は短期間で叶えられるものでなく、十分に時間をかけて色々な経験を積ませて、多くの人々と交流させて、会社を率いていく人材として自他共に認める能力や適性を獲得させることが肝要です。
反面、現在の経営者を取り巻く環境も多種多様であり、いつまでも健全に経営を進めていけるとは限りません。そのため後継者育成は可能な限り早い段階からスタートさせて、自らの将来的リスクに備えつつ十分な育成期間を確保できるよう努めます。
さまざまな部署で経験を積ませる
規模の大きな会社はもちろん、中小規模の会社であっても色々な従業員がそれぞれの部署で役目を担っており、経営者はどのような部署で誰がどんな仕事をしているのか全体像を把握しておかなければなりません。そのため後継者育成ではその人物が得意とする分野や領域ばかりで働かせるのでなく、色々な部署でそれぞれの業務に携わらせて、多角的な経験を積ませることが必要です。
また、その時々で各部署の人間関係を把握しておく機会にもつながります。
厳しい状況も経験させておく
会社経営は決して楽なことばかりでなく、むしろ経営が困難な課題へ直面した時にこそ経営者の手腕や責任が重大となります。そのため、いざという時に責任を持って適切な判断を行えるように、後継者候補にはあえて厳しい状況や困難な環境を経験させて、ビジネスパーソンとしての基盤を強化することも重要です。
ただし、いたずらに困難な条件を与えてしまい失敗すると自信喪失や周囲からの不信へつながるリスクもあるため、サポート体制を考えることも欠かせません。
後継者を補佐してくれる人材も育成しておく
困難な状況でも後継者をサポートし、正しい意味で後継者の意見を聞いて応えられる人材として、補佐となる人物の発見や育成に努めることも大切です。
後継者や会社が苦しい立場に置かれた際に、本当に信頼できる補佐役がいるかどうかで、課題解決に向けた可能性が大きく変動することは古今東西の常となります。
そのため後継者育成と同時に、後継者の補佐役の育成にも努めることが会社の将来性を健全化させるポイントです。
後継者の育成方法
後継者の育成方法として、具体的な対策やそれぞれの対策を実施する際の注意点などをまとめていますので、後継者育成の参考にしてください。
社内で行う後継者育成の方法
社内で行える後継者育成の方法としては、複数の部門で経験を積ませたり、経営幹部として事業運営に携わらせたりと色々なパターンがあります。
社員として複数部門をローテーションしてもらう
経営者として会社や各事業を統率してリードしていくためには、それぞれの事業や部門について理解や知識を備えていなければなりません。そのため後継者育成における定番の方法として、社内の複数部門を巡らせて幅広い現場経験を積ませるといったものがあります。
また、各部門をローテーションすることで候補者にとっての得意分野や苦手分野を発見して、どのような部分を伸ばしていくことが必要かといった課題を定義できることもあるでしょう。
経営幹部として経営に参加させる
社員の1人として他の従業員と共同しながら各部門の経験を積んだ後、改めて経営幹部の一員として参加させて事業の運営に関与させるといったことも必要です。
経営幹部として事業に関わらせることで、労働者の視点だけで会社や事業を見るのでなく、経営者の視点で全体を見るための意識を醸成することができます。
また、候補者に対して自分が将来の経営幹部をまとめる人材であるという意識を芽生えさせ、責任感や意欲を強化するといった効果も期待できます。
経営者が直接指導する
経営者としてのマインドや行動について、経営者が自ら指導者となって後継者に指導を行うことも大切です。
労働者と経営者の視点や意識が異なるように、経営者と役員ともまた意識や責任に違いがあります。そのため、経営者として本質的な指導や教育を施すことは、改めて後継者候補としての自覚を促すために役立ちます。
また経営者がこれまでにつちかってきた独自のノウハウを継承するといった上でも重要です。
新規事業の立ち上げなどを経験させる
課題やテーマを与えて経験を積ませるだけでなく、新規事業の立ち上げや新規部署の立ち上げなどにおけるリーダーとして任命することで、後継者が自発的に戦略を立案してチームを牽引していくといった訓練をさせることもできます。
新規事業の立ち上げと安定化は、まさしく会社経営の縮図であり、小規模な経営リハーサルと考えることも可能です。
また新規プロジェクトの立ち上げに必要な人員を後継者に選定させることで、信頼できる将来の右腕などを見つけられることもあります。
社外で行う後継者育成の方法
自社の中だけで後継者育成を行うのでなく、より幅広い経験や知見を身につけさせるために外部へ育成を行うことも肝要です。
他社での勤務を経験してもらう
自社の中だけで将来の経営者候補として働いていると、どうしても周囲の役員や従業員から特別な配慮をされたり、精神的に健全な成長が阻害されたりといったリスクも増大します。そのため、あえて別の企業や会社に所属してもらい、そこで自社の保護下にない場所で活躍する機会を与えることも重要です。
なお他社での勤務を経験させる場合、系列会社への出向や同業他社への就職など、状況に合わせて考えなければなりません。
セミナーや講習会、ビジネススクールを受講してもらう
経営者や経営者候補が集まるセミナーや講習会へ参加させたり、経営について学べるビジネススクールを受講させたりといったことも社外育成の1つです。
社外の講習会やセミナーでは単に知識を学べるだけでなく、他社の経営者や後継者とのコネクションを構築したり、そのような人々とコミュニケーションを重ねることで新たな気づきを得られたりするチャンスもあります。また資格を取得することで経歴や実績に信頼性が増すこともあるでしょう。
後継者育成における課題・懸念点
後継者育成を進める上で、社内育成でも社外育成でもそれぞれにリスクや懸念材料があることも無視できません。
そもそも候補者がいない
後継者育成を始めたいと思っても、根本的に後継者となり得る候補者がいなければ育成を始めることは不可能です。
そのため、まずは候補者として信頼できる人材を見つけて、その人物の適性や特性を考慮した上で的確な育成方法を考えるといった順番になります。
後継者育成では候補者だけでなく、経営者自身も色々と考えながら意欲的に取り組んでいくことが不可欠です。なお、どうしても候補者が見つからない場合は、専門のサービスや会社へ相談することも有用です。
候補者が途中で離職してしまう可能性も…
期待の候補者が見つかったからと後継者育成に力を入れすぎた結果、候補者が育成中にギブアップしてしまったり離職してしまったりする恐れもあります。
候補者はあくまでも将来の経営者として成長段階にある発展途上の人材であり、現時点ではまだ後継者や経営者として必要十分な能力やスキルを有していない点を理解してください。
そのため経営者として焦ることなく、候補者の人物像や能力を踏まえて育成プランを考えます。
後継者育成に悩む会社に検討してもらいたい
後継者を見つけるためのプラットフォームとは
後継者となるべき候補者を探す方法として、経営層に相応しい高度人材と経営者のニーズをマッチングさせるプラットフォームやサービスを利用することは有効です。
専門のサービスでは経営者が求める条件を提示した後、それに合致する人材をプラットフォームが提案してくれるため、効率的かつ効果的な後継者育成のチャンスを開拓することができます。
運任せの出会いにかけるのでなく、的確な人物評価を前提とした候補者選定が重要です。
「後継者がいない」という理由で、黒字廃業を選ぶ中小企業経営者が、全廃業のうち、3割を超えています。
独自の技術や知見が、後継者不足によって失われることは、日本経済の衰退を加速させることに他なりません。
その解決に、コンテンツという形で貢献するために生まれたメディアです。