黒字廃業とは
「黒字廃業」とは、会社の業績が黒字のまま事業を廃業することを指します。倒産とは異なり、廃業はあくまでも自主的に事業を止めるといった状況です。経営者が黒字廃業を選択する場合には主にふたつの理由があるとされていますが、どのような状況で黒字廃業が行われるのかを見ていきましょう。
後継者がいない
近年の日本では後継者不足が大きな課題となっています。この「後継者が不在である」という点が黒字廃業を選択する理由のひとつです。経営者が高齢となった場合、年齢的・体力的にいつまで事業を継続できるかわからないといったことから、引退を検討するといったケースが多くなります。
このようなタイミングで後継者が決まっていれば事業を継続可能ですが、もし後継者が不在であればやむをえず黒字廃業を選択する、というケースもあります。
資金繰りの悪化によるもの
企業の製品やサービスなどの売上が良ければ利益が生まれるものの、企業間の取引の場合には入金までにタイムラグが発生する場合も存在します。こういった場合、「黒字でも資金繰りが危うい」といった状態に陥ってしまうことによって、売上が入金されるまでの間は支払いが行えなくなってしまいます。
このような状況の場合には、経営者は黒字にもかかわらず廃業を選択せざるを得なくなってしまうというケースも考えられます。
日本プロ経営者協会 代表の小野氏に聞く「黒字廃業」について
(代表)
小野氏
なぜ黒字なのに廃業してしまうのか。黒字廃業パターンは以下の二つ
後継者が見つからない創業オーナー
- 息子を頼りにしていたが息子がやらない
やりたくても任せられない、またはそもそも息子がいない、娘は結婚して戻る事はない などの理由から。
- 社員で有望な人材がいない
どちらのパターンも、適していない人に継がせる位なら、廃業してちゃんと退職金を払って精算配当を得る方がよいと思っているため、黒字廃業を選択してしまいます。
創業オーナーから継いだがやりたい訳じゃなかった
創業オーナーが急逝して、継いだがやりたい訳じゃない娘さんが社長になったパターンです。
例)自分の妹は東京で結婚して幸せに専業主婦やっているのに自分は田舎で毎日父の残した会社を経営している。人生一度きりなので廃業して精算配当で東京に不動産を買って楽に暮らしたい。などの理由。
黒字廃業を選択する前に、「日本プロ経営者協会」へご相談ください。経営の経験があり後継者になりうる人材をご紹介いたします。
黒字廃業することなく事業承継するにはどうしたらよいか
会社を継いでくれる優秀な人いれば良いですよね。ただ、会社を継げるほど優秀な人が中小企業の経営を1200万円~1500万円程度の年収で受けてくれるのを期待するのは宝くじが当たらないかなと待つようなものです。
東京で2000万円とか稼げるスキルのある優秀な人材が何故地方で年収を下げてまで行くでしょうか?キャリアリスクを犯して年収を下げる方は非常に稀なケースです。稀に当たりくじを引ける経営者(優秀な後継者が経営者になってくれる経営者)もいますが、それは10社に2-3社程度ですので、あまり得策とは言えません。
日本プロ経営者協会であれば、ストックオプションによる報酬があるので、年収にも満足している、なおかつ過去に経営の経験がある方をご紹介いたします。
黒字廃業⇒後継者探しに変更した事例
どのような状況で廃業を考えていた社長でしたか?
ケース① 関西の建設業オーナー
非常に高利益(年間2-3億円程度)を安定的にあげる関西の建設業のオーナーから地方銀行を経由して後継者探しの相談がありました。
オーナーは「優秀な経営者が入ってくれるならその人に経営を任せたいが、中小企業に優秀な経営者を期待するのは非合理的な事であり、誰も来てくれない。 甥っ子に経営を任せたいと思っていたが、東京にて自分で設計事務所を起業してしまった。社内に後継者となり得る人物は存在せず、廃業も検討している。」
「ただしプロ経営者協会で経営者が見つかるならその人が経営してもらい、最終的にもし甥っ子が経営者となってくれる決断をしてくれた場合は甥っ子に経営を譲ってほしい。 もしそうなった場合、株は創業家で買い取る。買取価格は先に決めてリターンを確定してくれても良い。」という相談から後継者探しが始まりました。
ケース② 東海地方の機会部品の製造業
毎年安定して1億円前後の営業利益を計上している。3代目の社長は父(先代)から引き継いだ先代の次女のA社長(女性)。
自分の姉は結婚して東京で専業主婦をしており、独身の次女が父の急逝により経営を引き継いだというケースです。
「株は姉と社長で分け合ってるが、やりたくて社長になった訳ではない。自分が経営者を務めている事が不満。 ただ、会社には後継者がいない、自分だけ頑張っている社長は姉の様に、東京で不動産を買って賃料を得て楽に暮らしたい」と思っていらっしゃいました。
継ぎたくて継いだ訳ではないし、結構利益が積みあがったのでそろそろ廃業して精算を検討している。
そのタイミングで知人から紹介を受け、安定利益が出ているので今廃業するのは20名以上の従業員の為にもならないし、廃業よりは良い手取りを提供できる事を伝え、後継者を派遣する前提で株式を譲り受ける事となりました。
ケース③ 中四国地方の材木問屋
息子に恵まれず、2人の娘は結婚して家庭を持ち帰ってこない。百年以上の歴史を持ち会社に資産は多額にあり、利益はある程度は出るが将来不安が有る状況でした。
将来の業績にも明るい兆しも見えづらい事から円安で国内木材の価格競争力が有る今のうちに廃業又は売却を検討。
自信が満足する後継者が見つからなければ廃業して現在いる従業員に退職金を適正に払い廃業を決定しようとしていました。良い後継者がいれば考え直す事も検討しているなか、後継者探しの相談が来ました。
事業承継へ切り替えようと決断されたご理由はどのような物でしたか?
全てのオーナー様が「良い後継者が自社に入るなら廃業しない」という結論でした。
一番最初の事例では、中継ぎしてくれる後継者が現れてその後甥っ子が経営者になる事を決心してくれるなら甥っ子を最終的な経営者にしたいという話。
二番目の話では後継者が見つかることで、自身の手取りが廃業よりも増えるならば廃業ではなく、後継者を連れてくる前提のファンドに譲渡したいという話。
最後の話は、後継者が見つかれば株を誰が持つかは重要ではないので、先ず後継者を見つければ廃業をしない、というオーナーでした。
全てはオーナーが満足する後継者を見つけられるか否かです。ぜひ日本プロ経営者協会にて後継者探しをお手伝いさせてください。
黒字廃業の注意点は?
黒字廃業を行う際にはさまざまな点に注意する必要があります。
従業員の解雇が必要となる
黒字廃業は事業をストップするため、これまで自社で働いてきた従業員を解雇することになります。企業の経営者は従業員の生活を背負っているともいえることから、解雇を行うには重い決断が必要です。会社は黒字であるにもかかわらず従業員を解雇する、となった場合には十分に時間をかけて従業員としっかり向き合い、話をすることが求められます。
また、事前に必要な手続きやトラブルを防止する対策を考える、という点も意識して進めるのも大きなトラブルを起こさないために必要なポイントです。
取引先にもダメージを与えてしまう
廃業により、これまで取引を行ってきた取引先にも影響を与えます。特に自社の取引が特定の企業に集中している場合、相手企業は新しい取引先を見つけられるとは限りません。そのため影響も大きなものになり、廃業や倒産の可能性も否定できません。
資産が低価で売却されることになる
廃業する際には、自社の資産を売却します。しかし、事業用の資産は事業が継続しているからこそ価値があるといえるため、廃業する場合には企業の資産価値は低下することになってしまいます。さらに、これまで使用してきた設備についても解体や処分などにコストがかかる場合もあります。
以上から、廃業する場合にはこれまで資産だったものが負債となるケースも多く見られます。
黒字廃業を避けるためには?
黒字廃業を選択した場合には、従業員や取引先などさまざまな方面に影響を与えます。そこで黒字廃業を避けるためには、後継者探しが重要であるといえます。後継者を探す場合には、「親族から選ぶ」「従業員や役員から後継者を選ぶ」「M&Aを選択する」といった方法があります。
親族の中から選ぶ場合には自分の子どもにこだわらずに親族や子どもの配偶者などにまで範囲を広げて探すと良いでしょう。また従業員や役員などから後継者を選ぶ場合には、後継者教育の期間が短く済むといったメリットもあります。また、M&Aは第三者が企業の合併・買収を行うことによって経営権を第三者に渡すという方法であり、「株式譲渡」「事業譲渡」といった形で行われます。
もし親族や従業員の中に後継者が見つからないといったケースでは、M&Aについて検討してみてはいかがでしょうか。
実際の事例を見てみる
後継者を見つける手段は様々な選択肢があります。このサイトでは、日本プロ経営者協会を通じて新たな経営者を見つけた実際の事例を紹介しています。
「理想のオーナーと出会えた」と話す前代表はどのようにして後継者を選んだのでしょうか?百聞は一見に如かずです。
気になる方は是非覗いてみてください。
「後継者がいない」という理由で、黒字廃業を選ぶ中小企業経営者が、全廃業のうち、3割を超えています。
独自の技術や知見が、後継者不足によって失われることは、日本経済の衰退を加速させることに他なりません。
その解決に、コンテンツという形で貢献するために生まれたメディアです。