こちらの記事では、経済産業省により策定された「第三者承継支援総合パッケージ」について紹介しています。こちらの制度は、中小企業の事業承継をサポートするためのものです。どのような背景から策定された制度なのか、また制度の活用により期待できるメリットなどについてまとめました。
第三者承継支援総合パッケージとは
「第三者承継支援総合パッケージ」は、中小企業の事業承継をサポートする目的で経済産業省が策定した制度です。中小企業において後継者がいない場合、そのまま事業を続けているとこの先廃業する可能性もあります。このことから、経済産業省では中小企業を支援するために第三者への事業承継を推進する制度を設けています。
この第三者承継支援総合パッケージが策定される以前から、日本では中小企業の事業承継を国がサポートする制度が用意されていましたが、後継者が見つかっていない中小企業の場合には活用しにくい制度だったという問題がありました。しかしこの第三者承継支援総合パッケージは、後継者がいない中小企業もサポートできるといった点から活用が期待されているものになります。
第三者承継支援総合パッケージの制度の背景
「第三者承継」とは事業承継の方法のひとつであり、M&A(Mergers and Acquisitions / 企業の合併や買収)により会社の外に事業を引き継ぐことを指しています。今回ご紹介している「第三者承継支援総合パッケージ制度」は、この第三者承継における支援制度が不足していることから設けられた、という背景があります。
国では、以前から中小企業における事業承継の件数を増やすことを目的としてサポートを行ってきました。サポートの例としては事業承継税制などの制度が用意されていますが、これは事業承継を行う際の税金が猶予・免除されるといった内容のものであるため、後継者がまだ見つかっていない中小企業において事業承継を考える場合には利用しにくい制度となっていました。
以上の理由から、後継者がいないことを理由として黒字廃業となる可能性がある中小企業の事業承継をサポートする目的で第三者承継支援総合パッケージが設けられた、というわけです。
近年、中小企業がM&Aによって事業承継を行うといったケースも増えていますが、まだ少ないのが現状です。国としてもM&Aを重視しており、第三者承継支援総合パッケージを活用した事業承継が行われることが期待されている、という状況となっています。
第三者承継支援総合パッケージの目標
中小企業庁の資料によると、現在中小企業におけるM&Aは1年間に4,000件弱行われている状況ですが、潜在的な後継者不足の中小企業は127万件といわれています。そこで第三者承継支援総合パッケージでは「10年間で60万件(1年あたり6万件×10年)」の第三者承継を実現し、技術や雇用など中小企業が持っている経営資源を次世代の意欲ある経営者に受け継ぐことを目指しています。
現在行われているM&Aの件数から考えると非常に高い目標値が掲げられているといえますが、パッケージの活用により事業承継を進められれば、中小企業が抱えている後継者不足問題の解決につながっていくと考えられるでしょう。
日本における中小企業の休廃業・解散件数は、2013年は34,800件、2018年は約46,000件となっているように増加傾向にあります。この状況が続いていくと、貴重な技術や地域の雇用などが失われてしまう恐れがあるといえます。以上から、第三者承継支援総合パッケージの活用により、現在黒字廃業の可能性がある中小企業の第三者承継を促していくことを目標としているのです。
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2020/200130shoukei.pdf
第三者承継支援総合パッケージのメリット
第三者承継支援総合パッケージは、これまでM&Aがなかなか進まない要因となっていた課題の解決につながると考えられています。
そこで、ここでは中小企業の経営者が第三者承継支援総合パッケージの活用によって期待されている3つのメリット「自社を売ることへの抵抗を低減できる」、「M&Aのマッチングが成功する可能性を高められる」、「経営統合の難易度を低減できる」といった点についてご紹介していきます。
自社を売ることへの抵抗を低減
これまで、中小企業経営者がM&Aに難色を示していた理由としては、「M&Aは大企業が行うものだと考えていた」「M&Aが身近なものではなかった」といったものがあるとされています。第三者承継支援総合パッケージの活用によってM&Aに対する抵抗感を減らせる点がメリットのひとつです。
また、中小企業経営者がM&Aの活用により第三者承継を進めようとしても、M&Aの仲介を行っている業者からの情報提供が不十分で不安を感じてしまったり、仲介手数料の仕組みが分かりにくいために売却をためらってしまったりするといったケースもあるといわれています。
以上のような課題を解決するため、第三者承継支援総合パッケージではルール整備や官民連携を進めるなど、中小企業経営者が不安なくM&Aを活用できるような取り組みが行われています。
成立可能性の向上
中小企業の経営者が第三者承継支援総合パッケージを活用すると、M&Aのマッチングの可能性を上げられる点もメリットといえます。
現状、中小企業におけるM&Aのマッチング率が低い原因として挙げられるのが、「後継者に適した人材がいない」、「後継者候補が経営者補償などの理由から事業承継を拒否している」といった点が挙げられます。そこで第三者承継支援総合パッケージでは、登録事業者数を増やすことによって後継者の候補と出会う機会を増やす、また経営者保証に関わるマッチング時の制約を減らして後継者にかかる負担軽減を行うといった取り組みを行っています。
経営統合難易度の低減
これまで、「マッチング後の経営統合が困難である」という点もM&Aがなかなか増加しない理由のひとつとして挙げられていました。これは、承継後の経営統合や事業戦略の再構築においてコストが必要となるため。この課題への対策として、第三者承継支援総合パッケージでは、マッチング後の各種コスト削減にも取り組んでいます。
具体的な支援策としては、後継者の教育に関するサポートに加え、事業の選択と集中を促すための補助金制度を策定するといったように、経営統合に関する支援が積極的に行われる予定となっています。
このような取り組みによって経営統合に関する難易度の低減が期待できる点も第三者承継支援総合パッケージを活用する際のメリットといえるでしょう。

「後継者がいない」という理由で、黒字廃業を選ぶ中小企業経営者が、全廃業のうち、3割を超えています。
独自の技術や知見が、後継者不足によって失われることは、日本経済の衰退を加速させることに他なりません。
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