当サイトでは後継者不在に悩む中小企業に向け、課題解決のための情報を提供しています。
このページでは事業継承における銀行の役割や支援内容、相談におけるメリット・デメリットについて解説します。
事業承継における銀行の役割とは
平成28年9月に金融庁が金融仲介機能のベンチマークを策定した際の資料によると、多くの企業が銀行や信用金庫などの金融機関に対し、事業の理解に基づく融資や経営改善等に向けた支援を求めているとしています。
その中には事業承継に関するさまざまな相談も含まれており、金融庁がベンチマークを策定する際の指標として「事業承継支援先数」や「M&A支援先数」が選択ベンチマークの一つに採用されています。
これまで銀行は企業向けの担保・保証付き融資などに依存してきましたが、今後は取引先企業の成長や地域の活性化の相談先という役割が求められます。
企業の課題の把握や経営改善等を支援する銀行が評価されるようになっているのです。
銀行が事業継承問題を抱える中小企業を支援することは、取引先を失わずに済むだけでなく廃業の危機を救い雇用を維持することで地域社会にも貢献します。
財務状況を把握しやすい立場の銀行は事業継承において重要な役割を担います。
銀行が事業承継で行う支援
自社株に関する相談
親族間での事業承継において、自社株の生前贈与や相続を行うと、後継者は贈与税・相続税を納める必要があります。
この時、自社株の価値の算定を行わないと納税額がどのくらいになるのかがわかりません。
非上場企業の場合は上場企業のように株価で判断できませんが、銀行に相談すれば企業価値評価を行い、株価を算定することが可能になります。
また節税方法や納税するための資金の相談も対応できるのが銀行の強みです。
経営に関する相談
銀行は取引先企業に融資している関係で、経営に関する相談を受ける機会も多くあります。
経営が悪化すれば返済が滞るリスクを負うことになりますので、銀行は業績を上げるための相談や支援にも積極的に対応します。
事業継承問題も経営相談の一つとして対応します。
後継者への具体的な事業承継方法や事業継承までの経営改善、後継者不在の際のM&A先の紹介や、事業継続を断念する場合の廃業手続きまでさまざまな相談を受け付けています。
相手先紹介の相談
事業継承問題の解決策の中にM&Aがあります。
後継者不在でも事業を引継ぎする第三者に会社を譲渡することで事業継承が実現します。
銀行はさまざまな企業と取引しているためM&Aの相手先企業からも相談を受けるケースも多くあります。
M&A仲介会社では把握しきれない情報を持っていることもあり、銀行によってはM&A仲介部門を設け、積極的にM&A仲介を行っているケースもあるほどです。
仲介業者よりも銀行からの紹介の方が、経営者も安心感があるのかもしれません。
銀行に事業承継の相談をする
メリット
経営状態を把握している
事業承継の相談をどこかにしようとすると、事業内容や経営状況などを説明したり決算書などを提供するなど本題に入る前に手間がかかります。
その点、融資などで以前から取引のある銀行であれば、どんな会社なのか経営状態はどうなっているかなどの情報は把握しているため、スピーディーに事業承継の相談に移ることができます。
相談料・着手金がない銀行が多い
事業承継については銀行の他に公認会計士や弁護士など専門家に相談するケースも少なくありません。
そうした専門家は相談の段階から費用が発生することもありますが、銀行の場合は業務の一環として相談を受付けており、特に地方銀行では紹介した専門家からの手数料収入があるため、相談料や着手金が発生しないことも多いです。
事業承継に関わる全般の相談が可能
銀行には事業承継アドバイザーなど優秀な社内スタッフの他にも、さまざまな専門家とのネットワークがあります。
事業承継に関連して、経営改善や業績アップ、自社株・事業用資産の評価、節税対策など幅広く相談を受け付けており、自行で対応が難しい場合でも、各種の専門家を紹介してもらえるので中小企業にとっては心強いです。
【注目】まず後継者を探したい経営者に
適したプラットフォームとは
「後継者を探す」という点に一番の軸をおくと、金融機関ではM&Aという、売る会社が決まってから後継者がわかるということになってしまいます。どちらかというと、後継者が決まっている場合の相談先として考えた方がいいでしょう。
後継者を探している経営者の悩みとしては、M&Aでは相手先が決まってからでないと後継者がわからない。
事業承継ファンドでは株式譲渡後でないと人材会社から後継者を探せない。
サーチファンドでは若手の経営者としか出会えない…。
そんなことをお考えではないでしょうか。
そういった後継者では、オーナーは安心して会社を任せられません。
そこで生まれたのが、「日本プロ経営者協会」です。後継者の経験・資質・学歴などの条件をオーナーが挙げ、オーナーの条件に合う、かつその会社を経営したいプロフェッショナルが手を挙げる。
所属するプロ経営者の数は、2023年3月時点で1,500名。
まさに、中小企業経営者のためのプラットフォームです。
後継者が銀行保証に入る事は無く、ストックオプションなどの魅力的なインセンティブ設計を行うことで、後継者にもメリットがあるため、中小企業では招聘困難なスキルを持った後継者の招聘が可能となります。
銀行に事業承継の相談をする
デメリット
提携先に任されることがある
近年は事業承継ニーズの高まりから銀行内に専門部門を設置したり事業承継アドバイザーの資格を持つ行員が対応することも増えてきました。
しかし手続きは士業などの専門家へ、実務はM&A仲介会社といったように提携先に任せてしまうケースもあります。
事業承継対応に積極的な銀行でも、体制が万全ではないことがあります。
候補承継先の選択肢が少ない
第三者承継で承継先をマッチングする場合は、銀行の顧客から優先して選ばれることが多く、信頼できる点でそれがメリットである一方、事業承継先が限定されてしまうという面があります。
候補の承継先会社を数多くリストアップできるM&A仲介会社やマッチングサイトと比較すると、選択肢が少なくなるというデメリットがあります。
利益相反の可能性
事業承継先の企業(譲受会社)も同じ銀行の取引先のケースでは、銀行側としては、事業承継先に譲受のための資金を融資できるチャンスでもあります。
この点は明らかな法律違反はないとしても、非常にグレーな部分で承継先企業が有利になるような事業承継が進められる可能性は否定できず、利益相反になるリスクがあります。
近年は自治体と地域金融機関に
よる事業承継促進事業が活発化
後継者不在が理由で事業が継続できず廃業する中小企業が増えることは、地域経済や雇用にも大きな影響を与えることになります。
自治体ではこうした状況を問題視し、地域金融機関と連携した事業承継促進事業も活発化しています。
例えば以下の図のように、東京都では都内の信用金庫・信用組合・地方銀行の営業店ネットワークを活用し、事業承継の問題を抱える企業から金融機関職員がヒアリング。
課題をピックアップして整理し、専門家の無料派遣や承継計画策定などの支援を行っています。
これは地域金融機関と連携することで中小企業制度融資を活用した資金面の相談までできるのがポイント。
課題解決策の立案から事業承継に必要な資金調達までを一貫して支援が可能な取組みとなっています。
「後継者がいない」という理由で、黒字廃業を選ぶ中小企業経営者が、全廃業のうち、3割を超えています。
独自の技術や知見が、後継者不足によって失われることは、日本経済の衰退を加速させることに他なりません。
その解決に、コンテンツという形で貢献するために生まれたメディアです。