後継者がいない企業の経営者にとって、将来的に自分が引退する際に事業承継を目指すべきかいっそ廃業を検討すべきか悩むこともあるでしょう。このページでは、後継者のいない企業における事業承継と廃業についてまとめました。
事業承継を行うメリット・デメリット
事業承継とは他の人物へ企業の経営や事業を引き継ぐことであり、子供や孫といった家族へ事業承継することがあれば、第三者を後継者として事業承継することも可能です。
メリット
事業承継のメリットは、第一に会社を存続させられるという点が挙げられるでしょう。経営者としてこれまで積み重ねてきた事業や経営の歴史を終わらせることなく、次代へ引き継いでいけることは経営者として相応の価値があると考えられます。事業承継を行う候補者についても、経営状況が安定していれば自分なりに後継者として任命したい人間を検討できるため、本心から信頼している人物に経営を任せられるといった魅力もあります。
また、現在に会社へ勤めている従業員がそのまま次の経営者に代替わりしても働き続けられるという点も重要です。
その他、取引先など周囲への影響もコントロールしやすく、廃業や新会社の設立などにかかるコストを削減できることもメリットです。
デメリット
そもそも後継者として会社を任せられる人物が見つからなければ事業承継を行うことはできません。また根本的に事業性が悪化しており、将来的な破綻が予測できるような場合、次の世代へリスクを押しつけるという形になることもデメリットです。
事業承継によって経営を引き継いだ人物が、その後に自分の思惑とは異なるスタイルで会社を運営していくというパターンも考えられるでしょう。特に、事業承継を行って間もなく他社へ経営権や株式を譲渡・販売するという可能性もゼロではありません。
廃業を選択するメリット・デメリット
明らかに経営状況が悪化して、事業の継続が困難だと思われるような場合、廃業を選択することが合理的判断になることはあります。一方、後継者が見つからないため、自分としては会社を存続させたいものの、やむを得ず廃業するといったパターンもあるでしょう。
メリット
廃業を選択するメリットとしては、それ以上の赤字や負債の拡大を抑えられるという点が挙げられます。特に赤字経営が慢性化していて事業性の改善・回復が困難だと見込まれる場合、速やかに廃業してやり直すことで損切りを行えるといった考え方もあります。
また、経営者として将来性を期待も信用もできない会社を維持していくことはストレスになりがちです。そのため、いっそ廃業を選択して精神的負担から解放されることが自分のメンタル保護やQOLの向上に役立つといったパターンもあります。
デメリット
廃業のデメリットは、会社そのものが消滅してしまうという点です。
個人の思い出や感情としての価値はともかく、それまで積み上げてきた会社の歴史や実績といった経済的価値や社会的価値は廃業によって失われてしまうため、経営者として大きな喪失感や失望感を抱く可能性があります。
また、廃業することで従業員が働く場所を失うことも問題です。すぐに再就職先を見つけられるとも限らず、従業員によっては本人やその家族の生活まで破綻してしまう可能性があります。取引先の連鎖倒産といったリスクもあるでしょう。
その他、個人の資産などを担保にして企業の運営費をまかなっていたような場合、廃業しても負債が残ってしまい、破産に追い込まれるリスクも無視できません。
可能な限り事業承継を目指すことがおすすめ
企業の廃業は自社だけの問題でなく、取引先や周辺地域など様々な場所へ色々な形で影響が派生します。従業員についても失職によって人生設計が狂ってしまう恐れがあり、経営者自身も負債状況などによっては破産リスクがあります。
一方、事業承継であれば少なくとも会社として存続させた上でリプランニングなどを考えられるため、いきなり廃業を前提とするのでなく、まずは後継者の選定や事業承継といった方向で検討してみるようにしましょう。
なお、事業承継について悩んでいる時には専門家や専門機関へ相談することもおすすめです。
事業承継に悩んだら廃業の前にプロに相談しよう
中小企業の経営者にとって、事業承継や廃業の悩みを自社の従業員へ相談することは容易でなく、取引先へ相談すれば経営悪化を懸念して取引が中断されたり一層に不利な状況に陥ったりというリスクもあります。
そのため事業承継や廃業の悩みについては、中小企業庁の相談窓口や顧問弁護士、税理士、経営コンサルタントといった、専門性を有しており、客観的に自社の状況や経営者のマインドに寄り添ってくれるプロへ相談することが大切です。

「後継者がいない」という理由で、黒字廃業を選ぶ中小企業経営者が、全廃業のうち、3割を超えています。
独自の技術や知見が、後継者不足によって失われることは、日本経済の衰退を加速させることに他なりません。
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