2022年は後継者不在率が初めて6割を切る
帝国データバンクの全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)によると、2020年から2022年の間で後継者不在率が急速に低下。
これまで65%前後で推移していたものが、2022年には57.2%になり初めて6割を切りました。
後継者「不在」「あり」の内訳は2021年→2022年の1年間で見ても「前年から計画あり」が一気に増え、後継者「あり」の割合を高くしていることがわかります。
ここ数年で後継者不在の問題解消に取り組む企業が増えたことを意味します。
後継者不在率低下の動きがちょうど新型コロナ感染拡大の時期と重なっていることから、コロナ禍の影響は否めません。
もともと事業承継問題はありましたが、将来への不安が高まり現経営者が解決へ動き出したと考えられます。
また地域の金融機関が事業承継の相談窓口を設けたり、第三者への事業譲渡、M&Aプラットフォームサイト、事業承継ファンドなど解決のための制度や仕組みが整備されてきたことも、後継者不在率の低下につながっています。
事業承継については親族内承継、従業員承継、第三者への事業譲渡など、複数の選択肢があります。
中小企業経営者が後継者不足問題をスムーズに解決するためには自社に合った方法を選べるかどうかも重要なポイントです。
事業承継動向にも変化が
2018年〜2022年までの5年間の事業承継動向を就任経緯別に見ると、未だ同族承継の割合が最も高くはなっているものの、39.6%だったのが34.0%まで低下。
その一方で、内部昇格が2021年から1年間で31.4%→33.9%と増加していることがわかります。
また他社との吸収・合併を中心としたM&Aも増加傾向にあり、事業承継の考え方が子どもや親族間など同族承継からM&Aも含む第三者承継へと変わってきていることがわかります。
その中で外部招聘は5年間7.5%前後を推移し変化は見られません。
さらに後継候補が判明した全国約10万社の後継者属性を見ると2022年に「非同族」が36.1%と最も多く、「子供」35.6%よりも割合が高くなっています。
これは単純に子供がいなくなったからというのが理由ではありません。
もちろん子供がいなかったり、後継者になることを子供から断られるケースもありますが、中小企業の経営者の意識が従来の後継ぎ=子供ではなく、事業を継続するために最適な方法を考えるようになったことが大きいと考えられます。
中小企業を取り巻く環境は激しく変化しており、子供に継がせれば何とかなるという時代ではなくなりました。
未来に向けた新しい事業も次々と生まれており、経営者にとっても子ども世代にとっても事業継続に関わる選択肢が増えているとも言えます。
不在率は今後も低下の見通しだが…
中小企業の事業承継問題に関しては、経営者の意識の高まりに加え、M&Aの普及や企業間マッチングサービスの登場、国や自治体による支援策も追い風となって、後継者不在率は今後も低下傾向が続くと予想されています。
その一方で帝国データバンクの「後継者難倒産」推移データを見ると、2022年1~10月で408件発生しており、コロナ禍以降も減少傾向にはなく、1〜10月累計だけに注目すると、2022年はむしろ増加しています。
事業承継は取り組み始めてから実際に行われるまで、5年から10年は必要とされています。
コロナ禍における事業の先行き不安や、すでに経営者が高齢でに引き継ぐ時間がなく、廃業を余儀なくされるといったことも起きています。
東京商工リサーチの調査によると全国社長の平均年齢は63.02歳。2022年の調査で、過去最高齢となっています。
高齢化と業績悪化の関連性が高く、高齢の社長ほど長期的ビジョンを描けないまま設備投資や経営改善の遅れにより業績悪化につながることが明らかになっています。
事業承継には時間がかかることを考えると、60歳になった時点で後継者探しを考えても早過ぎではありません。
事業承継を支援するサービスや制度は整備されてきていますので、できるだけ早く取り掛かることが大切です。
さまざまな方法がありますが、重要なのはいかに理想の後継者と出会うかということ。
このサイトでは事業承継の相談先や後継者探しをどこに依頼できるかなどのお役立ち情報を掲載していますので是非参考にしてみてください。
後継者不足への具体的な解決策
事業の魅力を高める
新規事業の展開
今までの事業に加えて、新しいサービスや製品を試してみるのはいかがでしょうか。たとえば既存の技術やノウハウを、別の分野に活用してみるなど、これまで培った強みを新規事業につなげることで、若い世代や新しい人材からも注目されやすくなります。
働き方改革
フレックスタイムや在宅勤務など、働く場所や時間を柔軟に変えられる仕組みを導入することで、若い人材をはじめ幅広い人から「この会社で働いてみたい」と思われやすくなります。さらに、子育てや介護と仕事を両立できる環境づくりも、会社の魅力を高めるうえで効果的です。
外部人材の活用
従業員の昇格
現在の従業員の中から、将来の後継者候補となる人材を見つけて育てる方法です。研修プログラムやキャリアアップ制度を設ければ、社長の仕事をサポートできる人材を計画的に育成できます。
外部招聘(しょうへい)
「うちの会社にはいないタイプの人材を連れてくる」という考え方です。他社で経営経験を積んだ方や、専門的な知識を持つ方を新たに招くことで、事業をより大きく成長させられる可能性があります。
M&Aの活用
事業承継型M&A
別の会社との合併や買収で、会社規模を拡大できるうえ、後継者問題を解決できる場合があります。たとえば、後継者候補を抱える企業と一緒になることで、人材不足を補いながら、新しいノウハウや取引先との関係を手に入れることができるかもしれません。
第三者承継
必ずしも身内に継がせる必要はありません。まったく関係のない第三者を後継者として迎え入れる選択肢もあります。「家族外であっても、この人なら会社を任せたい」という方がいれば、第三者承継を検討してみる価値は大いにあります。
専門家の活用と計画的な事業承継
税理士や弁護士などの専門家は、相続や譲渡の手続き、税金対策などを詳しくサポートしてくれます。後継者問題は思っている以上に時間がかかるものなので、早めに計画を立てておくとスムーズです。これらの専門家と相談しながら、最適なスケジュールや方針を決めましょう。
業種別に見る後継者不足の現状と課題
建設業
- 現状: 後継者不在率が特に高く、若い人が業界に入ってこない。
- 課題: 「建設現場はキツい」といったイメージの改善が必要です。また、働きながら専門技術を学べるしくみや若い世代が活躍できる環境が不可欠です。
農業
- 現状: 高齢化が進み、後継者がどんどん減っている。
- 課題: 収益が不安定なイメージを払拭するために、ICT(スマート農業)など新しい技術の導入で生産性を上げる必要があります。また、週休二日制の導入など、働きやすい環境も重要です。
製造業
- 現状: 海外企業との競争が激しく、市場縮小の不安もある。
- 課題: 技術革新によるコスト削減や品質向上が求められています。新しい設備やデジタル技術を導入してグローバルで勝負できる体制を整えることで、後継者に「伸びしろのある事業だ」と感じてもらえるようにしましょう。
その他の後継者問題に関する
基礎知識
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は中小企業庁が実施している補助事業であり、中小企業や個人事業主を対象として、事業承継や会社の引き継ぎ・譲り渡し、あるいは廃業などにかかる経費の一部を補助する制度です。後継者がいない企業や事業主が支援してもらえるだけでなく、新しく事業を承継した事業主も制度を活用できます。
事業承継と廃業はどちらが適切か?
後継者が見つからない会社において、経営者として自分が引退した後の会社について誰かに事業承継すべきか、いっそ廃業すべきか悩むこともあるでしょう。事業承継と廃業にはそれぞれメリット・デメリットがあり、経営者としての考え方や現在の経営状況、従業員や取引先への影響など様々な観点から総合的に考えることが大切です。
廃業前に考えるべき廃業のメリット・デメリット
経営者の責任として、廃業によって生じるメリットやデメリットを把握・考慮しておくことも重要です。廃業に関連して生じるメリットやデメリット、廃業以外の選択として事業承継について紹介します。将来を検討する際の参考にしてみてください。
事業承継のマッチングを支援してくれるサービスがある?
後継者がいない中小企業や経営者などに対して、後継者となるべき人材や企業を選定した上で紹介して、事業承継を支援するサービスがマッチング支援です。第三者機関などが提供するマッチング支援を適切に活用することで、自社のニーズに合致した後継者をスムーズに見つけて、事業の将来的な安定と価値の継続を期待できるかもできません。
事業承継と事業譲渡の違いについて知る
事業承継は後継者や別の企業などへ会社の経営権や資産を引き継ぐことであり、事業譲渡では会社の事業の一部またはすべてを譲渡します。
事業承継の場合、経営権や資産をまとめて後継者へ引き継がせますが、事業譲渡ではあくまでも事業の受け渡しが行われるのみであり、会社の経営権そのものは手元に残るといった違いがあります。
後継者の育成はどう進めるべきか
将来的に事業を委ねられる次代の後継者候補を見つけられたとして、実際に後継者として会社を委ねるためにはその人物が正しく後継者に相応しい能力や適性を身につけていなければなりません。そのため、本当の意味で後継者を見つけようと思えば、候補となる人物を選定した上で、きちんと後継者としての育成を行っていくことが大切です。
事業承継税制とは
事業承継税制とは事業承継に関連した税制上の優遇措置であり、現在の経営者から会社を後継者へ引き継ぐ際に生じる相続税や贈与税といった税金について、一定の要件を満たすことで納税が猶予・免除される制度です。
事業承継税制は後継者のいない企業にとって後継者を見つけるチャンスを生む一方、リスクもあるため注意が必要です。
各地域の後継者不足に関する情報
東京
順調に思える東京の事業ですが、企業の倒産・休廃業・解散数は増加しています。ここでは、東京における事業承継の現状、および後継者の探し方などについて解説しています。
愛知
愛知では、後継者不在に悩んでいる経営者が増えています。工業が活発な愛知では半導体不足や人手不足の影響による倒産も懸念事項です。愛知の事業承継の現状や動向、後継者探しができる相談先などをまとめています。
大阪
後継者不在に悩んでいる経営者は少なくありません。大阪では、経営は黒字なのに、後継者不在が原因で廃業・解散している事業所がたくさんあります。大阪の事業承継の現状や動向、後継者探しができる相談先などを解説します
京都
観光業で有名な京都ですが実際には製造業も活発であり、京都府内には創業から100年以上の老舗企業も少なくありません。そのため京都では官民一体のオール京都体制で事業承継や事業譲渡の支援制度が実施されています。
広島
広島県では人口減少が続いており、県内企業の社長の平均年齢が60歳を上回るなど、後継者不足や後継者不在による企業倒産といったリスクが社会的課題となっています。
広島県における事業承継の動向や取り組みについてまとめました。
福岡
後継者探しに苦労している経営者は少なくありません。事業承継は地域によっても特徴があります。福岡は事業承継のニーズが高い地域です。福岡の事業承継の現状や動向、福岡で後継者探しができる相談先などを解説します
宮崎
宮崎の事業承継の動向や後継者不在の実状、また官民一体となって事業承継や事業存続へ取り組んでいる事業などについてまとめています。事業承継に関連した公的補助金についても紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
熊本
熊本市は九州で第3位の規模を持つ都市であり、また半導体分野大手の「TSMC」の日本進出など、熊本は色々と注目を集めているエリアです。反面、経営者の高齢化や後継者不足も問題になっており、改めて将来を見据えた対策が重要になっています。
北海道
北海道では、社長の高齢化が顕著です。後継者不足に加え、労働者不足が課題となっていることから、公的機関の支援も用意されています。北海道の事業承継の現状や動向、後継者探しができる相談先などを解説します
大分
少子高齢化を背景にした後継者不在問題。ここ大分でも、後継者不在による廃業が長く社会問題となっています。ここでは、大分における事業承継の現状、および後継者の探し方などについて解説しています。
岐阜
地域経済への貢献度が高い優良企業の中にも、後継者不在により黒字倒産する事例が見られます。御社はいかがでしょうか?ここでは、岐阜における事業承継の現状、および後継者の探し方などについて解説しています。
群馬
長く地域に貢献してきた中小企業は、その地域の大切な社会資産。後継者不在を理由に廃業を選ぶべきではありません。ここでは、群馬における事業承継の現状、および後継者の探し方などについて解説しています。
静岡
たびたびマスコミでも問題として取り上げられる中小企業の後継者不在問題。ここ静岡においても、後継者不在による廃業は深刻な状況です。ここでは、静岡における事業承継の現状、および後継者の探し方などについて解説しています。
高知
地域経済の財産となっている地元企業。後継者不在を理由に廃業するのは、従業員だけではなく地域社会にとっても大きなダメージです。ここでは、高知における事業承継の現状、および後継者の探し方などについて解説しています。
新潟
新潟県では少子高齢化による後継者不足が深刻で、地域の中小企業が事業承継の課題に直面しています。特に農業や製造業などの伝統産業を中心に、多くの企業が後継者探しに苦労していますが、M&Aによる事業承継が一つの解決策として注目されています。新潟県事業承継・引継ぎ支援センターや地域金融機関などの取り組みについてもまとめてみました。
秋田
秋田県の事業承継では、経営者の高齢化や後継者不足が地域経済の課題となっています。特に後継者不在率が全国平均を大幅に上回り、事業の継続や雇用維持が危機的状況に。これを受けて、県内では専門的な相談や人材マッチングを行う支援センター、税制優遇措置、M&A支援などが整備されています。具体的な成功事例や活用可能な補助金・融資制度を紹介し、地域企業の円滑な事業承継を目指すためのヒントを提供します。
沖縄
沖縄では中小企業の多くが後継者問題に直面し、全国平均を上回る後継者不在率が課題となっています。背景には経営者の高齢化や若者の県外流出があり、承継計画の未策定もスムーズな引き継ぎを妨げています。一方で、沖縄県事業承継支援センターや産業振興公社が提供する支援策、またM&Aの活用が注目されています。特にM&Aは親族内で後継者が見つからない場合の現実的な解決策となりつつあり、事業の存続や地域経済の活性化に貢献しています。
「後継者がいない」という理由で、黒字廃業を選ぶ中小企業経営者が、全廃業のうち、3割を超えています。
独自の技術や知見が、後継者不足によって失われることは、日本経済の衰退を加速させることに他なりません。
その解決に、コンテンツという形で貢献するために生まれたメディアです。
- 「後継者がいない」悩みを抱える中小企業経営者のためのサイト
- 事業承継と事業譲渡の違いについて知る
- 事業承継のマッチングを支援してくれるサービスがある?
- 廃業前に考えるべき
廃業のメリット・デメリット - 沖縄の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 北海道の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 東京の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 愛知の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 大阪の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 広島の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 新潟の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 熊本の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 宮崎の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 京都の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 秋田の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 福岡の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 事業承継と廃業はどちらが適切か?
- 中小企業の後継者不足対策の今
- 後継者がいない中小企業の黒字廃業が増えている
- 後継者のいない企業を助ける
「事業承継・引継ぎ補助金」 - 大分の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 岐阜の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 群馬の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 静岡の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 高知の事業承継の動向は?後継者の探し方を紹介
- 後継者の育成はどう進めるべきか
- 事業承継税制とは