事業承継が失敗する原因とは
事業継承は簡単に行えるものではありません。
実際、後継者の選定や教育、相続などでトラブルになり、失敗してしまう企業も多いようです。
事業継承に失敗すると、廃業や業績悪化、退職者の増加など、会社に大きな損害が生じてしまいます。
ここでは、事業承継が失敗する原因をいくつかご紹介します。
失敗の要因は企業によってさまざまですが、その大半は準備不足や売却するタイミングにあるようです。
それぞれの対策も解説するので、ぜひ参考にしてください。
事業承継のタイミングが遅い
「事業承継なんてまだ先」と考えている方、「いずれ息子に会社を継がせよう」と先延ばしにしている経営者は要注意です。
事業承継の時期を見失って廃業に追い込まれた企業は少なくありません。
中小企業のオーナー経営者の中には、事業の確保や売上を上げることには積極的なのに、事業承継や後継者の育成を後回しにする人が多いようです。
自身の体調の悪化、モチベーションの低下、市場の変化などによって事業が傾き始めてようやく事業承継を考え始めて、充分に引き継ぎや後継者教育ができないままに経営者が亡くなってしまっては、目も当てられません。
事業承継は、一日二日でできるようなものでないため、早めに準備を始めましょう。
準備期間の目安は、5年から10年。
経営者の平均引退年齢は一般的に70歳前後なので、60歳ごろには事業承継の準備をスタートするのがおすすめです。
相続争いが起こる
遺産を巡る相続争いはどの家庭にも起こりうることですが、被相続人が経営者だった場合は遺産額が高額になることが多く、相続争いが起こるリスクも高まります。
例えば、後継者である長男だけに全ての資産を継承しようとしていたのに、他の子どもたちから「遺留分」を請求されてしまった場合は、高額な代償金で経営自体が危うくなる可能性があります。
払えない場合は遺産分割協議がまとまらず、スムーズな事業承継ができなくなるかもしれません。
また、経営に関わらない親族が多くの株式を保有している場合は、経営状況について何も分かっていないにも関わらず経営へ口出ししてくることも考えられます。
対策としては、事前のコミュニケーションです。
オーナーは後継者だけを贔屓することなく、他の相続人ともコミュニケーションを取り、事業承継についての理解を求めるなど、良好な関係を築いておくことが大切です。
先代が事業に関わって社内が混乱する
事業承継後は、後継者が企業の経営を行い、先代は第一線を退くのが一般的です。
ところが、引退後も事業に積極的に関わろうとする先代経営者が意外に多いようです。
先代経営者がいつまでも経営に関わっていると、後継者が成長できないばかりか、周囲の従業員が先行きに不安を覚え、離職してしまうかもしれません。
また、先代派と当代派に分かれた派閥争いにまで発展してしまう恐れがあります。
事業継承を行ったのであれば、「まだ会社を任せられない」「自分がいないとダメだ」という考えを捨て、後任を信じて任せましょう。
そのためにも、じっくりと時間をかけて後継者を育成することが大切です。
周囲に相談しないまま事業承継をしてしまう
経営者が誰にも相談せず、独断だけで事業継承を進めて失敗する例もあります。
特にM&Aによる合併や売却を独断で進めてしまうと、手続きはスムーズに行えるかもしれませんが、親族や従業員から猛烈な反発に遭ってしまうでしょう。
理解を得られず、従業員が大量離職してしまう可能性もあります。
事業承継は会社全体の将来を左右する重要な問題です。
特にM&Aを選ぶ場合には、必ず専門家に相談しましょう。
従業員に対しても、適切なタイミングで説明を行うのがおすすめです。
後継者が決まらない
「後継者が決まらない・見つけられない」とお悩みの経営者も少なくないようです。
後継者が決まらない要因としては、元々親族に後継者がいない・社内に後継者になるような人材がいない場合もありますが、後継者自身に継承する意志がない場合もあります。
特に若い世代は安定志向が強く、会社を経営することに魅力を感じない人も増えています。
また、会社の経営状態が悪いせいで、継承を拒否される場合もあるでしょう。
せっかく後継者がいても、資本の承継ができない場合もあります。
銀行から借り入れを行い、オーナーの全株式を買えるほど資力のある従業員はあまり多くはないからです。
その場合は、M&Aを検討する必要が出てきます。
どのような選択をするのかも含めて、まずは事業承継の専門家に相談してみましょう。
【注目】最善の後継者を求める経営者のためのプラットフォームとは
M&Aでは相手先が決まってからでないと後継者がわからない。
事業承継ファンドでは株式譲渡後でないと人材会社から後継者を探せない。
サーチファンドでは若手の経営者としか出会えない。
それでは、オーナーは安心して会社を任せられません。
そこで生まれたのが、「日本プロ経営者協会」です。後継者の経験・資質・学歴などの条件をオーナーが挙げ、オーナーの条件に合う、かつその会社を経営したいプロフェッショナルが手を挙げる。
所属するプロ経営者の数は、2023年3月時点で1,500名。
まさに、中小企業経営者のためのプラットフォームです。
後継者が銀行保証に入る事は無く、ストックオプションなどの魅力的なインセンティブ設計を行うことで、後継者にもメリットがあるため、中小企業では招聘困難なスキルを持った後継者の招聘が可能となります。
事業承継のプロに聞く!事業承継が失敗する要因は?
ここでは、EBITA5千万以上の企業を中心に、後継者となるプロ経営者を紹介するサービスを提供している日本プロ経営者協会の小野様に、事業承継の失敗要因や失敗事例、失敗を回避するための対策についてお聞きしました。
失敗の原因は、最初の1ヶ月にあり
事業承継の成功と失敗の分かれ道は、最初の1か月で社員にどんな態度を取るか、という点にあります。
そこで自らが現場に下りていける人は成功できるし、降りずに上からトップダウンをしてしまう人は失敗します。
特に、経営が順調な会社で事業承継を行う場合、従業員たちは改革の必要性を感じていません。
それなのに、いきなり外からきた経営者が現状を否定し改革を振りかざしてしまうと、反発が生まれるでしょうし、最悪の場合、大量離職が発生して企業運営に支障をきたしてしまいます。
10人前後の会社で4〜5人も抜けてしまったら、業績が大幅にダウンしてしまいますよね。
実際私も、非常に優秀そうな経営者が、そういった手法で、優良な成長企業の業績を急落させて破産に追い込んでしまった案件を数多く知っています。
どんなに優秀な経営者でもトップダウンではうまくいかない
他にも、典型的な事例があります。
その会社は子どもたちに人気のグッズ販売会社で、一時YouTube等でも流行るなど、堅調に成長していました。
しかし、某投資会社によって買収され、送り込まれた経営者が、まさにトップダウンで改革を進めてしまった結果、事業再生にまで追い込まれたのです。
事業の失敗事例はメディアでも紹介され、その原因は世間にも知られていますが、事業承継の失敗の原因などはあまり調査されることがないため、MBA資格を保有していても学べていなかったのでしょう。
このため、皆さん同じような失敗を繰り返している、という状況なのではないかと考えています。
成功するためには従業員の“心”を掴むことが大切
事業承継を成功へ導くポイントは、トップダウンではなく、現場に降りて従業員の“心”をつかむことです。
特に中小企業の場合は、従業員数が少なく、社長との距離が近い環境にあります。
だからこそ、後継者自身が直接従業員と“心”を交わす必要があると思っています。
具体的には、数十名程度であれば、全員とランチ位はして、人となりや家族構成等をある程度把握し、顔と名前を一致させること。
改革・改善ありきではなく、まずは現場に降りて信頼を得てから、改革・改善という順序を取ることが大切で、実際そういうケースではスムーズに事業承継が行われていると思います。
「後継者がいない」という理由で、黒字廃業を選ぶ中小企業経営者が、全廃業のうち、3割を超えています。
独自の技術や知見が、後継者不足によって失われることは、日本経済の衰退を加速させることに他なりません。
その解決に、コンテンツという形で貢献するために生まれたメディアです。