当サイトでは後継者がいない中小企業の課題を解決する情報を提供しています。
このページでは後継者不在の中で事業を継続させる手段として、近年増加しているM&Aについて調査。メリット・デメリットをまとめました。
M&Aによる事業承継は年々増加
2022年版「中小企業白書」によると、中小企業の事業承継の選択肢としてM&Aが増えていることがわかります。
M&A件数は2011年は1,687件だったのに対し、2021年は4,280件と2倍以上になっており増加傾向が続いています。
その背景には日本の経済成長を担ってきた経営者が高齢化していること、また子どもが後を継がなくなってきていることがあります。
後継者問題が解決せずに廃業する中小企業が増えてしまうと、経済や雇用にも悪影響が出てきます。
そうした状況下において国も事業引継ぎ支援センターを設置し、M&Aも含む事業承継をバックアップしています。
国による税制支援
中小企業庁の資料によると2025年までに70歳を超える中小企業の経営者の半数(127万人)が後継者未定になると試算。
その中で約半数が黒字廃業の可能性があり、このままでは約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる(※)としています。
それだけ後継者問題が深刻化しており、国もこのような状況を見過ごすわけにはいかない状況です。
税金面では後継者に会社を引継ぐ際に発生する贈与税や相続税負担を軽減できる事業承継税制の整備を行っています。
また事業承継を契機として事業再編や事業統合等を行う中小企業・小規模事業者に対し、「事業承継・引継ぎ補助金」もスタート。
事業承継・経営資源引継ぎに要する費用の一部を補助しています。
事業承継税制
事業承継税制とは平成20年5月に成立した経営承継円滑化法(正式名は「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」)で定められたもので、事業承継に伴う非上場株式や個人の事業用資産に係る贈与税・相続税の納税猶予ができます。
平成30年の税制改正ではそれまでの一般措置に加え、10年間の措置として納税猶予の対象となる非上場株式等の制限撤廃や、納税猶予割合が80%から100%に引上げされる特例措置を創設。
事業承継の円滑化のための税制改革を進めています。
事業承継税制は対象株式の贈与税や相続税の納税が猶予されるメリットがありますが、廃業すると利子税が発生したり、適用期間中にM&Aなどで自社株式を第三者へと譲渡すると納税猶予が打ち切られるので注意が必要です。
事業承継補助金
正式名は「事業承継・引継ぎ補助金」で事業承継で発生する費用の一部を補助する制度です。
事業承継を機に新しい経営体制に組み直す中小企業を対象としており、令和3年から再チャレンジを目的とする廃業も補助対象となりました。
補助事業として「経営革新事業」「専門家活用事業」「廃業・再チャレンジ事業」の3つに分かれており、M&Aなどでかかる事業費や専門家活用した場合の費用を補助。
廃業・再チャレンジ事業は廃業と再チャレンジがセットで申請可能です。
なお廃業・再チャレンジ事業は経営革新事業・専門家活用事業との併用申請が可能で、M&Aへの取り組み後に廃業した場合は単独申請できます。
補助上限額は年度予算によって変わるため最新情報を確認することをおすすめします。
M&Aによる事業承継の
メリット・デメリット
メリット
- 後継者不在の課題を解決
- 従業員の雇用継続
- 取引先との関係維持
- 創業者利益・個人保証から開放
M&Aによる事業承継ができると後継者不在の問題は解消されます。
会社の業績が良く、黒字にも関わらず後継者が見つからないことで廃業になるリスクは回避され、会社が存続するため従業員の雇用も継続されます。
会社が存続するということは取引先との関係も維持することができ、突然の廃業で迷惑をかける心配はなくなります。
また譲受企業にとっては人材や技術をそのまま受け継いで事業も安定、ブランド力も獲得できます。
またオーナー経営者だった場合は事業譲渡により株式が現金化されるため、まとまった資金を得ることができますし、金融機関からの借り入れでの個人の債務保証からも開放されるため、安定した老後生活を迎えることができます。
デメリット
- 社内組織の混乱
- 従業員離脱の可能性
- 希望条件で譲渡できない
- 経営方針が変わる
M&Aにより会社は存続しますが、事業統合などにより社内が混乱する可能性があります。
経営者としては事業継続する手段として納得してM&Aを進めていても、従業員によっては不安に感じ、会社を辞めてしまうこともあります。
また事業譲渡をしたくてもすぐに売り手が見つかるとは限りません。
譲渡先が見つかっても譲渡価額など条件が折り合わないなど難航することもあります。
長引いて時間と工数が増えていけば、M&A関連費用もかさみます。
M&Aが成立しても経営理念や方針がそのまま引き継がれないことがあります。
M&Aにより自分の会社ではなくなるため、譲受企業が方針転換すれば、社名は同じでも考え方が全く異なる会社になってしまう可能性があります。
M&A仲介業者で
理想のM&Aは実現するか?
M&A仲介業者のメリット
- 譲渡先企業が見つかりやすい
- M&Aの知識・経験なしで進められる
- 現事業に専念できる
仲介業者に依頼すると譲渡先企業が見つかりやすくなります。
自社のみでM&Aを進めようとすると、こだわりの条件などがあり、交渉が難航してしまうことがありますが、仲介業者は落としどころがわかっているのでスピーディーです。
また実績が豊富な仲介業者に依頼すれば、税務や法務などM&Aに関する専門的な知識がなくても進めることが可能です。
M&Aを行うに当たって不安や疑問に感じている点についてもアドバイスが受けられるので安心です。
特に小規模な企業にとっては、現在の本業を行いながらM&Aを進めるのは大変ですが、仲介業者に条件を伝えてある程度任せられるようになれば、M&Aに影響されることなく日々の業務に専念できます。
M&A仲介業者のデメリット
- 買い手に有利な条件になりやすい
- 仲介手数料がかかる
- 仲介業者に差がある
仲介業者によっては売り手より買い手に有利な条件でM&Aを進めてしまう可能性があります。
これは買い手側の企業に勢いがあり、M&Aを繰り返すことで成長しているような場合は、今後の取引に期待してしまうためです。
また仲介業者は買い手だけでなく売り手に対しても手数料が発生(両手取引)します。
それにも関わらず、買い手優先で進められてしまうと、売り手が希望するより下の価格でM&Aが行われることになり利益相反になる可能性があります。
このようにM&Aを仲介業者に任せるということは、交渉や手続きの手間が軽減される一方で選ぶ仲介業者によって結果が変わってくることを意味します。
どの仲介業者も同じではありませんので実績や得意な業種など事前調査が重要です。
ファイナンシャルアドバイザーか
「仲介業者かファイナンシャルアドバイザーか」という議論は、仲介業者に批判的な内容に帰着しているケースを見かけることが多いと思います。
しかし、仲介業者が悪なのかというと、そんなことはありません。
ファイナンシャルアドバイザーは利益が5億円以下の業務になると、積極的に受けることがありませんでした。
しかし仲介業者の場合は、上の図のように、売り手・買い手両方の企業からフィーが取れるので、それ以下の規模の仕事でも積極的に受けています。
こういった事情によってM&A市場が活性化してきたという背景もあります。
結局相性などもあるので、どちらがいいとは一概に言い切れないというところです。
M&A仲介業者のメリットは、利益数億円未満の小規模会社にも割く予算が有るため、幅広い買い手とのネットワークを構築し、総合的に最良の企業と出会える可能性が上がること。
また、利益が数千万円等小規模の企業もきちんと取り扱いをしてくれること、売り手・買い手双方のメリット最大化を目指すため、後からの問題が起きにくいことも挙げられます。
デメリットは、中には財務やM&Aの知識等が十分ではない人材も存在すること、ファイナンシャルアドバイザーと比較して利益相反関係があることでしょう。
ファイナンシャルアドバイザーのメリットは、利益が5億円以上の企業であれば、売り手だけの利益最大化のために動くので、売却益が大きくなる場合があることが挙げられます。
反面、小規模会社に割く予算が無いため、利益額が数億よりも小さいサイズの企業にはあまり多数の工数を割いてくれないことがデメリットになります。
小規模企業には割けるリソースが多くはないので、マッチングの仕組みは高度とは言い難く、数多くの買い手候補に当たるのは困難だと思っておいた方がいいでしょう。
売り手・買い手のどちらか一方の利益の為に動くため、後から問題が起きやすいという課題もあります。
中小企業におけるM&Aの課題
ネガティブイメージが強い
M&Aに対して身売りや敵対的買収などネガティブイメージが根強いことが課題としてあります。
それが後継者問題を解決する手段としてM&Aが選ばれない理由にもなっています。経営者だけでなく周囲の意識変革も必要です。
適正な企業評価がしにくい
上場していない中小企業は客観的に会社を判断するデータが不足しています。
将来性がある事業を行っていても、経営の数字として表れていなければ買い手側としても評価がしにくく譲渡先が見つからないこともあります。
M&Aに関する知識不足
東京商工会議所が行ったアンケート調査によればM&Aへの「イメージとして良い手段と思う」が39%。最も割合が高いのは「よくわからない」47%でした。(※)
中小企業ではM&Aについて知識がある人材がいない傾向にあります。
M&A最大のデメリット「後継者ファーストではない」ことを
解決する方法もある
「後継者探し」という点を主軸に考えると、M&Aでは、売り手企業が決まってから後継者が決まるという、「順番が違う」ことになってしまいます。
嫁ぐ家だけ決まっていて、嫁ぐ相手が長男なのか次男なのか決まっていないようなもので、「これでは大事な会社を売ることができない」と思っている経営者も多いはずです。
そういった後継者の悩みを解決するために生まれたのが、一般社団法人日本プロ経営者協会です。
後継者の経験・資質・学歴などの条件をオーナーが挙げ、オーナーの条件に合う、かつその会社を経営したいプロフェッショナルが手を挙げる。
所属するプロ経営者の数は、2023年3月時点で1,500名。
まさに、中小企業経営者のためのプラットフォームです。
後継者が銀行保証に入る事は無く、ストックオプションなどの魅力的なインセンティブ設計を行うことで、後継者にもメリットがあるため、中小企業では招聘困難なスキルを持った後継者の招聘が可能になります。
後継者を見つけたあとにM&Aが可能になるため、M&Aにおけるデメリットである「後継者がわからない」という点が解消できます。
「後継者がいない」という理由で、黒字廃業を選ぶ中小企業経営者が、全廃業のうち、3割を超えています。
独自の技術や知見が、後継者不足によって失われることは、日本経済の衰退を加速させることに他なりません。
その解決に、コンテンツという形で貢献するために生まれたメディアです。