静岡の会社売却・事業承継の現状
帝国データバンクでは、2022年における静岡県内の約7,600社を対象に、後継者不在に関する調査を行いました。
調査の結果、後継者が「いない」または「未定」と回答した企業の数が約4,100社。県内の53.6%の企業において、後継者不在問題を抱えていることが判明しました。
同調査は2011年分から公表されていますが、公表データの中で最も後継者不在率が高かった年が2020年。県内企業の実に60.7%が後継者不在問題を抱えていましたが、上記の通り、わずか2年後の2022年には53.6%まで低下。2011年以来、最低水準となっています。
数値が改善した背景には、新型コロナをきっかけに経営者が後継者問題へ真剣に向き合うようになったこと、国や自治体、金融機関などの支援活動が活発化したことなどがあるでしょう。
ただし、2011年以来の最低水準になったとはいえ、依然として県内企業の過半数は後継者不在問題を抱えています。数値面の改善は好ましいことですが、現状として県内の後継者不在問題は深刻な状況です。
参考までに、業種別での後継者不在率を見ると、建設業が64.1%とトップ。全国的に同様の傾向が見られます。
静岡の会社売却・事業承継の動向
同じく帝国データバンクの調査から、県内で会社売却・事業承継が行われた案件の中で、先代経営者と後継者との関係を見てみましょう。
- 同族承認…41.2%
- 内部昇格…31.0%
- M&Aほか…17.6%
- 外部招聘…5.3%
- 創業者…4.8%
同族承認の割合が最も多い41.2%となったものの、静岡では同族承認の比率が減少傾向にあります。逆に増加傾向となっているのが内部昇格とM&A。事業承継において、ある程度の比率でM&Aも注目されている結果となっています(全国平均は20.3%)。
商工会・商工会議所による支援の実態
M&A仲介会社は全国をターゲットにしているので「地方だから都心と大きく変わる」という事はありませんが、地方は地方銀行や信金が一部の事業承継を担っています。
また、地方になれば国税等に勤めていた重鎮の税理士が居る税理士事務所が強い力を持っています。ただ、買手ネットワークは少ないため、 オーナーから頼まれた大きな案件ですとM&A仲介会社に紹介して紹介フィーを得ているのが実情です。
仲介会社が扱えない小規模の案件であれば、税理士事務所の職員がネットのバトンズ等に掲載する等して探す、又は諸侯会議所や事業引継センターに紹介されています。 ただ、「なかなか決まらない」「後継者が現れる事もほぼない」という声が多々あります。
各エリアの引継ぎ支援センターの実態
地方の引継センターの実態は詳細は分からないものの、「小規模案件を取り扱う」という意味ではそれなりの役割を果たしていると思われます。
実際に商工会や引継ぎ支援センターへお願いすべき社長は?
小規模な企業の社長におすすめです。フィーが無料だから良い訳ではないので少し規模があれば、よりインセンティブを持つ仲介会社、営業利益が10億円を超える等の会社は より大手のM&Aアドバイザーを選ぶ等を検討するのが一般的にはおすすめです。
静岡の会社売却・事業承継先を探す手段
後継者不在問題を抱えている静岡県内の経営者に向け、会社売却先や事業承継先を探す主な手段をご紹介しましょう。
親族を後継者にする
事業承継の王道ですが、改めて自分の子供や親族を後継者にすることを検討してみてはいかがでしょうか?後継者不在問題を解決するための最も現実的な手段です。
すでにお子様は別の仕事に就いて安定しているかもしれませんが、子供として、常に親の事業の後継者がいない状況を心配しているはずです。親が想定していなかった前向きな反応が見られるかもしれません。
社員を後継者にする
信頼できる社員に事業を継いでもらえれば、経営者としては安心でしょう。
ただし、一般的に社員への事業承継では、経営者が持つ全株式の譲渡が行われます。該当する社員に相応の資力がなければ、事業承継は成立しないかもしれません。
事業承継・引継ぎセンターを利用する
自治体や中小機構が設ける事業承継・引継ぎセンターに相談してみることも一法です。同センターでは、過去、多くの後継者不在問題を解決に導いています。信頼できる相談窓口となるのではないでしょうか。
M&A仲介業者のサービスを利用する
M&Aを仲介している民間企業に相談してみることも有効です。
一般に成功報酬は高額となりますが、実績の豊富な業者であれば、質の高い買収相手をスピーディに見つけてくれる可能性があります。
M&Aプラットフォームサイトを利用する
M&Aで自社を売りたい人と他社を買いたい人をマッチングするサービスです。
比較的低コストで手軽に利用できることから、後継者のいない多くの経営者がサービスに登録しています。
候補となる相手が見つかった後のサービス内容や報酬については、サイトを運営する業者によって異なるので事前に確認しましょう。
銀行・証券会社に相談する
M&Aや事業承継の専門相談窓口を設けている金融機関が多くあります。普段から取引のある銀行であれば、心情的な意味でも融資先確保の意味でも、親身になって相談に応じてくれるでしょう。
これらのほかにも、士業(弁護士・公認会計士・税理士・司法書士など)の事務所で事業承継の相談に応じていることがあります。過去の実績を確認の上、相談先の候補として検討してみても良いでしょう。
なお最近では、従来とは異なる手法で事業承継を支援する一般社団法人日本プロ経営者協会の活動も注目されています。後継者不在の相談先として、同協会が力強い存在になるかもしれません。
理想の後継者を求める経営者のためのプラットフォーム
静岡で後継者不在問題を抱えている経営者には、上述の通り多くの相談窓口があります。悩んでいるだけで事態が解決へ向かうことはありません。まずは経営者自身、従業員とその家族を守るため、一刻も早く動き出すことが重要です。
ただし、仮にいずれかの窓口を通じて後継ぎの候補者が見つかったとしても、その候補者が自社の文化や理念をしっかりと理解してくれるかは分かりません。これまでとは感覚の異なる経営がなされた場合、従業員や取引先を混乱させてしまう恐れもあります。「かえって廃業したほうが良かった」という事態に陥らないよう、後継者探しには慎重に慎重を重ねる必要があるでしょう。
事業承継サービスをめぐるこれらの現実に対し、新たな一石を投じたのが一般社団法人日本プロ経営者協会。経営者が求める後継者の条件を詳細に提示し、この条件にマッチしたプロ経営者が手を挙げる方式で、これまで精度の高い事業承継を数々実現してきました。
同協会に在籍しているプロ経営者は約1,500名(2022年3月現在)。後継者不在という閉塞的状況が、同協会を通じて逆に事業の大きな飛躍へとつながるきっかけになるかもしれません。
「後継者がいない」という理由で、黒字廃業を選ぶ中小企業経営者が、全廃業のうち、3割を超えています。
独自の技術や知見が、後継者不足によって失われることは、日本経済の衰退を加速させることに他なりません。
その解決に、コンテンツという形で貢献するために生まれたメディアです。