当サイトは事業承継に悩む中小企業向けに役立つ情報を提供しています。
事業継承や後継者探しを始める際に顧問税理士に相談する経営者も多いと思いますが、このページでは、税理士ができることについてまとめました。
中小企業の事業継承を支援する
税理士
少し古い情報になりますが、2017年中小企業白書の資料によると、後継者決定・未決定どちらにおいても事業の承継に関する相手として顧問の公認会計士・税理士が最も多く、以降は親戚、友人・知人、金融機関と続いています。
ここから、中小企業の経営者にとって税理士は通常から会社の数字に関する相談をしていることもあり、身近な存在として感じていることがわかります。
また経営や資産の準備を勧められた相手も顧問の公認会計士・税理士の割合がトップです。
税理士というと、確定申告や節税対策など税金に関する業務をイメージしがちですが、事業承継における相談相手としても大きく関わり、中小企業の経営者を支援する立場として活躍していることがわかります。
事業承継を支援するプラットフォーム「担い手探しナビ」とは
中小企業の一番の相談役である全国の税理士が登録する日本税理士会連合会(日税連)では、顧客の事業承継を支援するためのプラットフォーム「担い手探しナビ」を2018年10月から運営スタートしました。
顧問税理士主導による事業承継を実現することを目的としており、関与先企業の承諾を得たうえで、案件登録や検索、案件への問合せ対応が可能な仕組みとなっています。
利用は税理士のみに制限されているためセキュリティ面でも安心です。
税理士であれば申請によりすぐに利用ができ、2020年10月時点で約6,200名の日税連会員が利用しています。
以前は税理士が相談を受けても事業承継の専門家や M&A仲介会社を紹介する程度だったものが、直接関与できるようになる意味は大きいと言えます。
サービス内容とメリット
担い手探しナビはクローズドなM&Aマッチングサイトと言えます。
売り手と買い手をつなぐプラットフォームである点は共通していますが、税理士が窓口となっており無料で利用できる点が一般的なマッチングサイトと異なります。
事業承継問題を解決する方法にはさまざまありますが、第三者承継で相手先企業を経営者自身で探すのは手間も時間もかかります。
その点、税理士が経営者に代わって案件登録を行うので後継者探しが楽に行えるようになります。
会社の内情についても顧問税理士なら熟知しているので、経営者は事業内容を細かく説明したり、財務資料を用意する必要はありません。
また仲介業者や民間のマッチングサイトのようにサービス利用に関する手数料がかからないのもメリットの一つです。
利用方法
担い手探しナビへの登録を希望する場合は、税理士が用意するサイト掲載の確認書にサインし、相談しながら社名が特定されないノンネーム情報で登録を行います。
個人や法人、企業の規模などによる制限はありません。
登録時の必須項目は、区分(譲渡し/譲受け)、案件タイトル、案件詳細、業種、企業の地域のみ。
担い手探しナビトップページから条件を指定して案件の検索も可能で、気になった案件が見つかったら税理士を通じて関与先企業に提案・相談します。
また税理士に連絡を取りたい場合は、サイト内からメッセージを送ることができるようになっています。
相手先企業と直接連絡を取り合うことなく顧問税理士が窓口となって動いてくれるので安心です。
【注目】最善の後継者を求める経営者のためのプラットフォームとは
税理士が顧客のために利用できる「担い手ナビ」のように、経営者が理想の後継者を探すために誕生したプラットフォームもあります。
それが、「日本プロ経営者協会」です。所属するプロ経営者の数は、2023年3月時点で1,500名。
後継者の経験・資質・学歴などの条件をオーナーが挙げ、オーナーの条件に合う、かつその会社を経営したいプロフェッショナルが手を挙げる。
後継者が銀行保証に入る事は無く、ストックオプションなどの魅力的なインセンティブ設計を行うことで、後継者にもメリットがあるため、中小企業では招聘困難なスキルを持った後継者の招聘が可能となります。
このように、中小企業経営者が後継者を探すためのプラットフォームは、知らないだけで色々存在しますので、ぜひ当メディアで情報収集をしていただければと思います。
税理士による事業承継業務の概要
親族内承継
親族内承継の場合、自社株の引き継ぎで譲渡、生前贈与、相続などで発生する申告の手続きや評価額が大きい場合の節税対策が税理士の主な業務となります。
また税金コストを念頭に、最適な承継方法・タイミングについてアドバイスも行います。
スムーズに事業承継が完了すれば、依頼料だけで済みますが、親族内でトラブルが生じたり経営者個人の相続など、別途相談が必要になるようなことがあると、その分の費用が追加されるので注意が必要です。
親族外承継
親族外承継では後継者に自社株を譲渡する場合もありますし、将来的に現経営者の親族に戻す場合は、経営権(社長としての地位)のみ引き継ぐ場合もあります。
自社株を譲渡する場合、贈与税などがかかるため税理士が税額を算出します。
その他、譲渡価格算定のための自社株評価、承継方法・資金調達方法、節税に関するアドバイスも税理士が行う業務の中に含まれます。
税理士が対応が難しいことは他の専門家と連携し問題解決にあたります。
M&A
事業承継の手段として外部の個人・法人に事業や会社を譲渡するM&Aを選択する中小企業も増えてきました。
M&Aはスキームや売買条件の検討から買い手企業探し、条件交渉、譲渡契約締結、資産移転手続きと段階的に進められます。
税理士はこうしたプロセスの中で売却金額や従業員の待遇など条件面の妥当性について専門家としての意見を求められたり、買い手企業のデューデリジェンスの立ち会いなど経営者をサポートする立場として動きます。
税務ならお任せ。
しかし後継者探しには難点が
顧問税理士がいる場合は、普段から会社の経営数字に関する相談をする機会が多いため、事業承継についても相談がしやすく、必要があれば士業のネットワークを通じて他の専門家を紹介してもらえるというメリットがあります。
相談窓口や会社のことをよく知るアドバイザーとしては安心ですし、後継者が決まっていて税務面をお願いするだけならよいのですが、後継者不在でM&Aも含め後継者探しから事業承継を検討したい場合は、力不足になってしまう面は否めません。
もちろん日税連の「担い手探しナビ」は買い手探しツールとして有効ですが、それのみだとマッチングの相手が限定されてしまい、理想の後継者とは出会えない可能性もあります。
とくに第三者承継を進めるためには、手間や追加費用がかかることもありますが、M&Aプラットフォームや仲介業者、また先ほど紹介した「日本プロ経営者協会」など、他の方法も検討しながら、総合的に判断することをおすすめします。
「後継者がいない」という理由で、黒字廃業を選ぶ中小企業経営者が、全廃業のうち、3割を超えています。
独自の技術や知見が、後継者不足によって失われることは、日本経済の衰退を加速させることに他なりません。
その解決に、コンテンツという形で貢献するために生まれたメディアです。